「60の涙」
                                                  土建屋寅次郎

  「感動」この二文字を久々に味わった。物、金ではない、純粋なモノであった。今年の二月から為真、
 小向の体育館で毎週、火、金 の二日、室内トレーニングに汗を流してきた。
 柔軟体操に始まり、ランニング、キャッチボール、ネットに向かってのトスバッテング。これらが主な
 メニューで単調ではあるが2時間もすると、正直汗が出てきた。
 これが4月の終わりまで続き、5月近くになりようやく、土の上での練習、試合が出来るようになり、
 フリーバッテング、守備の練習と重ねてきた。
  不肖「寅」と致しましては今年、ようやく還暦を迎え、ソフトボール、シニァの部に、新人として加入
 を許されました。
 最初は、世の習いと致しまして、ボール拾い、酒の沸かし方、注ぎ方等を厳しく教え込まれました。
 幸いなことに、その方の事に関しましては、血統的と申しますか、天性のモノがございまして、
 すぐに覚え、初夏を迎える頃には、先輩方に追いつき、追い越すまでになりました。
  今年のチーム目標は、「ネンリンピック大阪大会に出場すること」でありました。
 6月18日 各務原において県下より11チームが集まり、予選にその覇を競いました。
 先輩の方々は今までに何度も、各チームと対戦され、個人的な交流もあり、相手をよくご存じで
 ありまして、何処が強くて、何処が弱いのか、ケツの毛までとは行かなくとも、知っておられます。
 その結果、初戦突破が鍵であるとのおおせである。
 相手の名は岐阜市の「グレートベァーズ」。
 今までは、勝ったり負けたりの相手。
 試合開始、トップバッターはセカンド寅、いきなりレフト前ヒット! 我がチームは、1番バッターが出塁
 した試合はほとんど勝っていると言う。人を上手くおだてる監督がいる。
 その後苦しい試合展開ではあったが、結局2;1で辛勝!
 大阪へ行くとすれば、まずは岐阜のあたりまで来た勘定か?
 第2戦は御嵩町の伏見ロートルズ。
 これは恐れをなしたか、敵前逃亡で不戦勝。
 これで関ヶ原あたりまで来たところかな?
 第3戦は可児シニァ。これまではあまり戦ったことはないが、負ける相手ではないと言う。
 一番 寅が打ちました。ショートゴロ、やばい!と思いきや、ショートがハンブルしてセーフ!
 これも勝つのか・・・? 
 案の定8点を取る。しかし最終回、気がゆるんだか、5点取られて、一瞬ヒヤリとしたが勝った。
 これで京都位まで来た!大阪は目前だ!
 決勝は天敵 岐阜クラブ。これは強い。今までは、ほとんどこのクラブが全国大会に出ている。
 メンバーも30名を越えているという。高校野球で言うならば、岐阜商業クラスだ。
 このチーム、準決勝は23;0で勝ちあがってきている。
 我がチームもライオンの餌食かと思いきや、一番 寅は粘った挙句にレフト前にクリーンヒット!
 こりゃ勝つぞー!
 初回に3点取りリード!大阪ドームがかすかに見えてきた感じ!3回に1点追加。
 6回には喜八がヒットで一塁ランナー、 寅が右中間突破の3塁打!続けてスクイズ!2点追加!
 ピッチャー井上は海外旅行を棒にふって、今日に賭けたと言う。その恨みつらみが乗り移ったのか
 鬼気迫るものがあった。
 半部ヤケにも見えたが・・・・・相手に打たせない!
 奇跡が起きた!郡上北高が岐阜商業を6;0で完封し、甲子園に駒を進めたに等しい。
 この瞬間、高橋(角八のおやじ)総監督は泣いていた。
 他の者も声が上ずっている。そばに行くと俺も泣き出しそうだ。全員冬から、よくやった!
 60にして味わった感動の涙!
                 ・・・・生きてる!
 今年の秋、ネンリンピックは大阪ドームでの開会式で始まる。
 岐阜県代表として、恥ずかしくないプレーをして、一つでも多く感動を味わってきたい。
 「ほら吹き寅の寝言」が真実となった一席のお粗末。
 この続きは又秋に。